2024年3月に石川県小松市で、市内全域をカバーするライドシェアサービスが立ち上がりました。自治体が主体となって運用するライドシェアサービスはまだ少なく、非常に注目を集めています。この動きは、公共交通機関が十分ではない地域で自家用有償旅客運送という制度を使って始まったものです。この制度は自治体やNPO、一般社団法人などが主体となり、通常のバスやタクシーがカバーしきれない交通空白地を対象にしています。
2023年12月に行われた規制緩和を受けて導入されたもので、タクシー料金の8割程度まで運賃を上げることができるようになりました。また、市街地であってもタクシーが足りない時など「交通サービスが限られる時間帯」も交通空白地とみなすことが認められるようになったため、それが市内全域でライドシェアが実現するきっかけとなりました。
今回は、そんな小松市によるライドシェアサービス「i-Chan」についてまとめました。
石川県小松市のライドシェア「i-Chan」とは
2024年3月22日に小松市で「小松市ライドシェアi-Chan(あいちゃん)」の本格運行がスタートしました。小松市が主体となって運営する事業で、地元のタクシー会社が車両の安全管理やドライバーの研修をサポートしています。
もともと、このライドシェアは能登半島地震の被災者を支援する「復興ライドシェア」として2月29日にスタートしていましたが、北陸新幹線の「小松駅」開業に合わせて、小松市内全域への本格的なサービスに拡大されました。サービスは小松市内だけでなく、隣接する能美市や加賀市でも利用が可能です。
利用対象者は、能登半島地震の二次避難者、小松市民、そして小松市を訪れる人々です。運賃は、二次避難者には無料クーポンが提供されていて、その他の利用者は通常のタクシー料金の約8割となるメリットがあります。
予約はスマホアプリ「いれトク!」または電話で行います。アプリでは、乗車地と目的地、乗車人数や時間などを指定して予約をします。現在の運行は毎週木曜日から土曜日の17時から24時ですが、ドライバーの体制が整い次第、毎日の運行を行う予定とのことです。
サービス概要(小松市HPから引用)
項目 | 詳細 |
---|---|
運行期間 | 3月22日から毎週木曜日、金曜日、土曜日のみ運行 ※ドライバーの体制が整い次第、毎日運行予定 |
運行時間 | 17時から24時まで(予約受付は23時30分まで) |
運行区域 | 小松市内全域 ※発地または着地が小松市内であれば能美市、加賀市での乗降も可能 |
対象者 | 能登半島地震の二次避難者、市民、来訪者 |
運賃 | 能登半島地震の二次避難者:無料 市民及び来訪者:タクシー料金の約8割 |
支払い方法 | 能登半島地震の二次避難者:無料クーポン 市民及び来訪者:PayPay(6月よりクレジット決済等予定) |
予約方法 | 専門アプリ「いれトク!」及び電話 |
アプリによる予約 | アプリ「いれトク!」から |
電話による予約 | 電話番号: 050-3493-0068 受付時間: 16時から24時(運行日のみ) |
「i-Chan」が開始された背景
小松市においては、特に夜間の地域住民の移動手段の確保が長らく課題でした。最近では、能登半島地震による被災者が多数、二次避難者として小松市内に滞在していますが、自家用車を避難先に持ってくることができず慢性的に移動手段が不足しています。
また、3月16日には北陸新幹線が敦賀まで延伸されたことで、小松市へも観光客増加が見込まれます。そうなると、タクシーや運転代行業者だけでは需要に対応しきれない可能性が出てきたのです。このような理由からi-Chanは開始されるに至りました。
自治体ライドシェアが暮らしを支える
こちらの記事でも書いていますが、地方の公共交通機関のほとんどが赤字運営で、次々に撤退しています。特に過疎地においては、バスも電車もないため交通の足のほとんどを自家用車に頼らざるを得ない状況です。
タクシーを配車しようにも、場所によっては断られたり必要な時に来てもらえなかったりと不便が多いと聞きます。そのような地で自家用車がない人はどうなるのでしょうか?
近所や親兄弟を頼って乗せて貰うしか方法がないことは明白ですよね。病院や買い物に出かける毎に、頼るのは気が引けると思いますし、毎回何かしらの謝礼なども用意しないとならずヤキモキすることは容易に想像ができます。交通空白地とは正にこの事で、本当に車を必要としている人の元まで届いていないのが現状です。
そんな中、自治体主導のライドシェアは、営利目的ではなく地域活性目的で導入されることが多いため、タクシーだったら配車を断られるような場所にも柔軟に対応してもらえることが期待され、交通空白地を少しでも埋めることに寄与できるのではないでしょうか?
これから日本全国各地で同様のサービスが開始されていくと考えますが、地域振興の一環として自治体ライドシェアが広まっていくと良いなと感じています。